2014年07月31日

創作ショート文

タイトル「ふつうプラス」




駅は普段より空気が重いように感じた。
駅のホームには次の電車を待つ人々が並んでいる。
その中で仲良く二列で並ぶ二人の男性がいた。

「雨は嫌だなぁ。」
「俺だって嫌だよ。特に梅雨なんかはさ、ジメジメするし汗ばむし何にも良いことないよ。」
「夏が大嫌いだよな。」
そう喋る二人の名は、それぞれ岩城宏太(いわき こうた)と高橋新平(たかはし しんぺい)。
同じ高校に通う中学時代からのクラスメイトだ。


駅のホームは学校からの帰宅ラッシュから少し経ったせいか、少し静けさが漂っている。
二人の会話も周りに聞こえるほど
宏太は少し寂しそうな表情を浮かべつつ新平に語り出す。
「もうさ、早く卒業して東京へ行きたいよ。」
「どうして?」
戸惑う新平に宏太は笑みを浮かべる。

「何、変な顔してるんだ?だってさ、こんな田舎なんか上へ目指せることなんかないだろ?だから、華やかな都会で一発当てたいんだ。そうだな、街中でスカウトされてモデルデビューとか夢が広がるだろ!?」

「無理してるんじゃねぇか?おかしいよ、理想を高くしてさ・・・。それこそ、具体的なものなんか無いのに都会へ行って一発当てたいとか。」

新平は不安な気持ちを口にするも宏太の意思は固い。

「やってみなきゃわからないだろ?俺がビッグになれば、この街も「岩城宏太 生誕の地!」ってなるし、みんな歓迎してくれるよ!な?」
「マジなんだ・・・ね。じゃ、仕方ないか。」

モヤモヤした気持ちは残っている中、雨は止んでいた。駅にはまだ次の電車がやってこない。

新平は傘をたたみ、地面に置くと腕を大きく伸ばした。
「そこまで本気なら俺応援するよ。」
「ははっ、嬉しいこと言うね〜。」
ひじでお互いを交わしながら二人は大いに笑った。
そんな中、新平が言いたげそうに宏太を見つめる。

「なんだなんだ?そんなに見つめてさ。ん?お前も都会に行くって決めた?」

「違うよ!なんというか、言いにくいんだけどさ・・・」
言葉が詰まる。
どうすれば伝わるか新平は考え、宏太の目を見つめ、口を開く。

「お前といると・・・なんか・・・胸がざわつくというか・・・、宏太が好きなんだ!」
突然の告白に宏太は一瞬戸惑うが。

「ニヤリ・・・。」
そう言いながら宏太はニヤッとした顔を見せつける。
「お、おかしくなんかないって!なんというか、中学の時からずっと一緒でさ、彼女・・・じゃないけど!そういう心地よさがお前にはあったんだ。」
顔を赤めつつ必死に告白する新平を宏太は自分の顎に手を当てまじまじと聞き入っていた。

「ほぅ〜?」
「だからさ、お前が都会に出るなんて聞いてショックで・・・。」

ポンっ。

宏太の手は新平の肩をかけ、さっきとは打って変わって優しく微笑んだ。

「新平、俺のことをそこまで想ってくれるなんてビックリだよ。」
「宏太・・・。」
「もういいんだな?俺は卒業したら都会へ出て行くのは止めないでいいと。」
「あぁ。むしろ、応援するからがんばってくれ・・・って、まだ中間テスト終わってないから、そっちを先にしようよ。」
「アハハハハ!だな。テストがダメなら卒業できないからね。わかったよ。」
新平の中にあったモヤモヤが晴れ、宏太と共に多いに笑った。

「あ、そうだ・・・。」

宏太は不気味な笑みを浮かべ、新平に顔を向ける。
「新平、この際だからキスしようぜ。」

「ハイぃ!?」

当たり前のように驚く新平は、同性のキスには抵抗がある。普通に考えれば当たり前だが、今の状況に頭の中は混乱していた。
「ごめん、あまりにも唐突過ぎて・・・。っていうか、電車来るからやめようよ。」
「え?次の電車か来るのはまだだし、通過する電車はあったかなー?」
二人が待つ電車はあと5分ほどで到着するがそれまでに駅にやって来る電車はないようだ。
宏太はそれまでの間にキスしようと企んでいた。もちろん、今さっき思いついたのだが。
「それでも!なんでキスしようとか思うんだよ!?」
「単に今そんな気分なんだ、キスしてもいいじゃねぇか。今まで平凡で普通だった学校生活にこういう経験をプラスすれば高校の思い出ももっと良くなると思うけどねぇ?」
「そんなプラス要素なんか要らねぇって!」

頑なにこばむ新平だが、心の中ではまんざらでもないようで、刻々と近づく電車の到着の前までに済ませたい気持ちもあった。
だが、相手は同性のクラスメイト。そう簡単に出来るわけがない。

しかし、電車が到着する時間が迫っていることに焦りを感じた新平は決断する。

「わ、分かったよ。お前とキスすればいいんだろ?」
「早く決めたらじっくりキスできたのになー。ほらっ。」
周りに誰もいないことを確認しつつ、肩に手をかけ体を寄せあう。
そして、顔を距離が徐々に縮まって、ついにお互いの唇がゆっくりと重なり合う。
「(あ・・・、意外と悪くないかも?)」
新平は心の中で妙な心地よさを感じていた。すると、

「お母さーん、この人男の人とチューしてるよー?」
二人が体を寄り合う間にやってきた幼稚園児の少女が不思議そうに見つめていて新平はパニックになった。
「うわ!ヤベェ!早く逃げようよ!」
「ハハハ、そうだな。」
「何、余裕ぶってるんだよ!電車も・・・、あっ、来た!」

新平は宏太の手を握り、到着した電車に逃げるように乗り込んだ。
閉まるドアを前に二人はホッとひと息した。
新平は体中冷や汗をかくほど疲れていたが、宏太はというと・・・

「じゃあね〜、バイバーイ。」
キスをした後とは思えない余裕の表情で、ポカンとした顔をした少女に手を振っていた。
「なんで手を振る余裕があるんだよ・・・?」
「お互い楽しければそれでいいじゃん!」
「いや、女の子の顔見たか?まるで僕たち怪しいカップルに見られてるって。」
まったく・・・とつぶやく新平は宏太が楽しんでる姿を見て、このひと時を自分自身も楽しげだったのは宏太には秘密にしておこうと心の中で思ったのだった。


糸冬
posted by 賢者聖者hikohei at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 小学生レベルの妄想
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